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切られ与三郎 [時代劇の名作の1本!]

☆切られ与三郎
(1960年制作、伊藤大輔監督・脚本、撮影:宮川一夫、音楽:斎藤一郎
市川雷蔵、淡路恵子、冨士真奈美、浦辺粂子、小沢栄太郎、中村玉緒、多々良純)
   
江戸時代嘉永6年(1853年)中村座にて上演された「与話情浮名横櫛」の中の演目のひとつで、通称「切られ与三」で名高い歌舞伎である。
お富与三郎、源氏店(げんやだな)としても有名である。

伊藤大輔監督、宮川一夫撮影監督、主演市川雷蔵は、「1958年:弁天小僧」をヒットさせ、再びトリオで映画製作に挑んだ作品、新たな解釈を加えた野心作となっている。

お富に扮するのは、淡路恵子(出演時27歳)で、大人の色気で画面を彩り、粋なお妾さんを演じている。この雰囲気はなかなか出せるものではなく、日常の生活の営みの中で身に付いた所作、教養が出ている。
萬屋錦之介と再婚し幸せかに見えたが、錦之介の浮気で離婚したが、最後まで錦之介を愛した人でもある。「男はつらいよ知床慕情」での、三船敏郎との共演が印象深いが、映画デビュー作は、黒澤明監督、三船敏郎主演の「野良犬」、16歳ながら犯人を庇う役柄で強烈なデビューを飾っている。

撮影監督宮川一夫の画面構成が見事で、世界の宮川を感じられる作品でもある。
日活京都、京都大映、フリー時代と1930年代半ばから1980年代後半まで活躍した日本を代表する撮影監督の一人である。溝口健二、黒澤明、稲垣浩、森一生、三隅研次、篠田正浩監督など錚々たる監督と仕事をしている。

放蕩息子が、余興三昧の三味線引きからやくざ者に転落、人殺しの汚名まで着せられて、とうとう本当に人を殺めるが、義理の妹の幸せを願い奮闘している内に、妹の本当の気持ちを知り自殺した妹を抱いて共に身を沈めるというお涙頂戴ものである。

おきん役の富士真奈美が、あまりにも可愛いくびっくりだし、大映の看板女優の中村玉緒も出演、彩りを添えている。
思惑と違いどんどん不幸になってゆくという筋立ては、当時の世相を反映したものでもあるのだろうが、今の世では“辛気臭い”で片づけられる作品だろう。
セットの見事さといい、映画職人たちの心意気が感じられる作品で見応え十分。

“毎日が映画日和” 75点




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河内山宗俊 [時代劇の名作の1本!]

☆河内山宗俊
(1936年制作、山中貞夫監督、脚本:三村伸太郎、音楽:西悟郎、撮影:町井春美、
河原崎長十郎、中村翫右衛門、原節子、加東大介、市川扇弁、山岸しづ江、)
   
歌舞伎等の題材として有名な江戸時代の悪漢の物語。

実在の人物だったらしいが、映画の脚本は、全くのフィクションである。
実際に、水戸藩を強請ったり、悪事を重ねていたらしいのだが、人情に厚いところも有り、講談や浪曲、歌舞伎の主人公として人気を博した。

僅か28年という短い人生を終えた山中貞夫監督の作品である。
5年間の監督作品で現存するのは「人情紙風船」「丹下左膳百万両の壺」「河内山宗俊」の3本だけということ。ほとんどは、戦火で焼失、紛失したとのこと。

この映画も、最後には大立廻りがあったらしいが、GHQにカットされたらしいとのこと。
セリフが聞きづらかったのが残念だったが、時代劇の雰囲気が良く出ていて、全編セット撮影と思われるが、美術、装飾等頑張っているのが良くわかる。

原節子が、デビュー3年目の初々しい姿を見せている、何と16歳の原節子である。加東大介が、原節子を置屋へ売り払う役で出演、若々しい姿を見せている。主演の2人は良く知らないが、歌舞伎で活躍したのは勿論だが、映画にも数多く出演している。
実際はもっと長かったものと思われ、途中話が飛んでいる部分もあり上映時間は、80分ぐらいの作品だった。

甘酒を売る娘が、弟の命を助けるため300両というお金を工面する手段として置屋へ身を沈めるのを、大芝居を売って金を工面し、助けるという物語。
小柄のエピソードや宗俊の妻の嫉妬などのエピソードが、中途半端でこの辺は、カットされた影響が出ているものと思われる。懐かしい時代劇を観たという感想である。

“毎日が映画日和” 70点


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切腹(小林正樹監督) [時代劇の名作の1本!]

☆切腹
(1962年製作 小林正樹監督、脚本:橋本忍 音楽:武満徹 撮影:宮島義男 原作:滝口康彦
仲代達矢、石浜朗、岩下志麻、丹波哲郎、三国連太郎、三島雅夫、中谷一郎、佐藤慶、稲葉義男、青木義朗、井川比佐志、松村達三、小林昭二)
     
時代は、1630年、巷には食い詰め郎人が横行し、武家の屋敷を訪ねては
生活困窮のあまり、切腹するので軒先を借りたいと申し出ると武士の情けで何がしかの金銭を貰ったことから、多くの浪人が真似をするようになり、武家は困っていた。

そんな矢先、一人の武士(津雲半四郎)が、切腹のため軒先を借りたいと井伊家を訪ねたことから、
この物語は始まる。
カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞作品で、社会派監督として知られた小林正樹監督渾身の作品。
人の情け、建前と本音、武士の面子などが問われ、融通の利かない武家社会への痛烈な皮肉も込められた骨太の作品となっている。

時代劇らしく、後半迫力ある殺陣のシーンが、描かれる。丹波哲郎(当時40歳)演ずる沢潟彦九郎との一騎打ちのシーンは、剣客2人のそれぞれの構え、(流派の違い)が興味を引く。

最後の大立ち回りは、仲代達也の迫真の演技に圧倒されるが、この時30歳、「七人の侍」で、通行人の素浪人役を演じてから8年後である。濃いひげ顔で、貧乏浪人の役ながら、深い陰影を湛えた浪人役を演じ見応え十分。

三国連太郎(当時39歳)が、井伊家の家老斎藤勘解由役で、建前論を押し通そうとして、結局は優秀な部下たちを失ってしまう、指導者の懐の深さが問われるが、結局部下にしわ寄せが行く、サラリーマン社会と全く構図は一緒である。

娘婿が、困窮のあまり窮余の一策として、切腹を申し出てきたことを逆手にとって、切腹させるとさらし者にする。その上、竹光であることを揶揄し、竹光で切腹させる。“武士に二言は無い”との論法である。

そこには、何故の切腹か、金子に困っている理由は何か との問いかけもなく人の情けは無い。
義父の仲代達矢が、その復讐に立ち上がるという物語で、最後は壮絶な討死を遂げる。
暗い内容だが、重厚感に満ち、黒白画面が良く合う。
いろいろ考えさせられる映画で、133分の上映時間はあっという間に過ぎていく。

“毎日が映画日和” 85点

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