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子連れ狼(第6作目)―地獄へ行くぞ!大五郎― [面白時代劇を見逃すな!]

☆子連れ狼―地獄へ行くぞ!大五郎―
(1974年制作、黒田義之監督、脚本:中村努、音楽:村井邦彦、撮影:牧浦地志、
 若山富三郎、大木実、富川昌宏、木村功、瞳順子、睦五郎、小林千枝、草野大悟、石橋蓮司、曽根晴美、西田良、潮健児)
   
シリーズ6作目にして最終作。(主演の若山富三郎は、もっと制作を続ける予定だったために、柳生烈堂との決着はつかないまま、終わってしまった)

蔵王の雪山でロケしたという合戦シーンは、今迄観たこともない画面となっているが、そりやスキーで滑りながらの斬り合いは、大変だったことだろう。
当初監督予定だった、三隅研次は、脚本の段階でこれでは西部劇ではないかと、演出を断っていて、特撮物で知られた黒田義之監督に演出を頼んだという裏話がある。

子連れ狼の乳母車が、そりとなって雪原を駆け巡るのは、荒唐無稽だが、今迄もありえない設定で制作されてきたシリーズということも考えると、これはこれで面白いアイデアだった。

柳生烈堂(大木実)も子供を殺され残るは、娘香織(瞳順子)一人となり、拝一刀へ挑んでゆくが返り討ちに会い正妻の子を全て失った烈堂は、妾腹の子で、土蜘蛛一味を率いる土蜘蛛兵衛(木村功)に最後の望みを託すが、柳生の為ではなく、土蜘蛛一族のために拝一刀を倒すためだと拝一刀へ挑んでいく。
設定が面白いし、土蜘蛛3人衆無我(宮口二郎)無門(石橋蓮司)無堂(草野大悟)が、無気味で凄かったのだが、意外とあっさり一刀の乳母車の薙刀兵器に殺されてしまうのは、ちょっと意表を突かれた感じでもう少し迫力あるシーンが見たかった。

「続・荒野の用心棒:Dijango」で、ジャンゴが棺桶からガトリング銃を出し、ジャクソン一味を撃ち殺すシーンの様な、荒唐無稽な物語を見せてくれるのだが、今回は蔵王の一面の雪の中に裏柳生黒鍬一味が、ズラッと並んでいる様は壮観で、(前作では砂丘での決闘シーンで似た様なシーンがある)スタントの人達も大変だったことだろう。

このシリーズは、アメリカでロジャー・コーマンの会社が配給、第1作と2作を編集し、「Shogun Assassin」として1980年に公開された。
オカルト的人気を誇る作品で、クエンティン・タランティーノ等映画人のファンも多い。アメリカンコミックの大御所、フランク・ミラーが「子連れ狼」を大絶賛したことから、アメリカでの人気も高い作品である。

今となっては、この手の作品は誰も制作しないが、ガキ向けの映画ばかり制作する時間と余裕があったら、大人向けの面白い時代劇を是非制作してほしい。
シリアスな原作本の映画化も悪くないが、コミック本の映画化も、面白いと思うのだが、、、。
子役、富川昌宏君のさまざまな驚きの表情や、可愛い仕草が大好きだった。

“毎日が映画日和” 80点




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賞金首―一瞬八人斬り― [面白時代劇を見逃すな!]

☆賞金首-一瞬八人斬り-
(1972年制作、小沢茂弘監督、脚本:高田宏治、本田達男、音楽:桜井英顕、撮影:山岸長樹
若山富三郎、大木実、瞳順子、内田朝雄、天地茂、内藤武敏、五味龍太郎、遠藤辰雄、今井健二、藤岡重慶、川村真樹、加藤小夜子)
    
若山富三郎主演の「賞金稼ぎ」シリーズの3作目である。
マカロニ・ウェスタン風のタッチは健在で、娯楽活劇アクション満載の時代劇である。

今回は、金を巡るエピソードが主題で、佐渡と甲州の金山が、江戸幕府の財政を支えていたのだが、甲州からの運ばれた金塊を強奪されてしまい、困った幕府が、賞金稼ぎ錣市兵衛(若山富三郎)に奪還を依頼するというストーリー。

アクションシーンが随所に盛り込まれていて、時代劇の衣裳は身に付けてはいるが、感覚は西部劇タッチで、荒唐無稽な物語が展開する。脚本作りに苦労したと思うが、残虐なシーン、エロチックなシーンなどを絡めた演出は、制作時人気の高かったマカロニ・ウェスタンを思わせる様な、サービス精神に溢れた映画となっている。

主演級の天地茂や大木実、内藤武敏等が脇を固め、いつもは、悪役の遠藤辰雄が、口のきけない役で、珍しく最後まで生き残っているのも珍しい。
女優陣、エロチック部門担当は、お紋役の川村真樹で宝塚出身ながら、体当たりの演技を見せている。他には、加藤小夜子、瞳順子等が出演。

賞金稼ぎシリーズは、この作品が最後となって終ったが、若山富三郎はこの後、ヒット作「子連れ狼」シリーズに主演する。(全6作制作されアメリカでも人気が高い)
1968年から5作続いた「極悪坊主」シリーズも面白かったが、類稀な剣さばきで、一世を風靡した俳優である。1970年代後半からは、渋い脇役俳優として数々の名作に出演し、ハリウッド作品にも2本出演している。(「がんばれ!ベアーズ大旋風」「ブラック・レイン」)

時代の流れを読み、流行にいち早く乗り作品を作り続けた、東映プログラム・ピクチャー時代の名残の作品で、ヒットしたかどうかというよりは、その商魂の逞しさに脱帽する。大衆の娯楽としての映画の一面を反映した作品として考えると、それはそれで、興味深く面白い。

“毎日が映画日和” 65点



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鬼平犯科帳(劇場版) [面白時代劇を見逃すな!]

☆鬼平犯科帳(劇場版)
(1995年製作、小野田嘉幹監督、脚本:野上龍雄、撮影:伊佐山巌
音楽:津島利章、原作:池波正太郎
中村吉右衛門、多岐川裕美、岩下志麻、藤田まこと、世良公則、石橋蓮司、峰岸徹、遠藤憲一、平泉成、本田博太郎、高橋悦史、御木本伸介、勝野洋、尾身としのり、真田健一郎、中村歌昇、梶芽衣子、江戸家猫八、蟹江敬三、藤巻潤
江戸家まねき猫、)
 
松竹創立100周年を記念して制作された作品で、二代目中村吉右衛門が鬼平を演ずる。
テレビドラマで根強い人気を誇る「鬼平犯科帳」シリーズは、松本幸四郎(後の松本白鷗)主演でテレビドラマ化され、その後主演は丹波哲郎、中村錦之介、中村吉右衛門と続いている。

最も人気の高いのは、立居振舞といい、セリフ回しといい正に適役の(初代松本幸四郎の二男)中村吉右衛門が演じる長谷川平蔵で、1989年からスタートし、現在(2015年)でもスペシャル版が製作されている人気長寿番組である。長谷川平蔵の厳しさと人情味が溢れ、当時の料理なども描かれるのが、人気の秘訣と思われる。
流石にレギュラー陣も一人づつ亡くなり、そろそろ新しいキャスティングが、望まれる世代交代の時期に差し掛かっているのではないだろうか。

ストーリーは、池波正太郎の小説から「狐火の勇五郎」「白子の菊右衛門」「荒神のお豊」等のエピソードをメインに、組み立てられている。
おまさと狐火の2代目のエピソードは、平蔵のおまさ(梶芽衣子)への愛情がいっぱい詰まった物語で、大阪で幸せに暮らしていたはずが、流行病で勇五郎(世良公則)が死んで戻ってくると“つくづくお前は男運が悪いなあ”と涙を見せる。

白子の菊右衛門(藤田まこと)と荒神のお豊(岩下志麻)が結託して平蔵を亡き者にしようと江戸の町を火攻めにしたり、平蔵の部下の妻を殺害、門番を殺害など非道の限りを尽くし、平蔵の息子辰蔵に狙いを定める当たりは、サスペンスも盛りがる。

小説では、荒神のお夏で、お豊は別のキャラクターだったと思うが、この映画では、合体したような人物像となっている。白子の菊右衛門役の藤田まことは流石の貫禄で、憎々しげに楽しそうに演じているのが良く画面から伝わってくる。(藤枝梅安に登場するのは、白子屋菊右衛門である)

剣客役の石橋蓮司は、いつみても上手いと思うし、テレビのレギュラー陣も、20年前ということで、今は亡き蟹江敬三や江戸家猫八も元気な姿を見せている。鬼平の右腕佐島忠介役を演じた高橋悦史はこの作品が遺作となった。

あくまでもテレビの延長線上で、よりスケール感ある大作となってはいないが、安心して鬼平犯科帳の世界を堪能出来る作品となっている。
中村吉右衛門は、二枚目ではないのが良いし、声や仕草が良く似合う。
役作りが上手いことも人気の秘訣だろうが、やはり原作の面白さがこの作品の一番の魅力である。
「藤枝梅安」「剣客商売」も小説・テレビ共人気シリーズとなっていて、「藤枝梅安」は3作品が映画化されている。
(平成28年12月、中村吉右衛門主演のシリーズは、終了した。
 新しい鬼平は、誰が演じて、スタートするのだろうか。楽しみである。)

“毎日が映画日和” 70点

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五人の賞金稼ぎ(若山富三郎) [面白時代劇を見逃すな!]

☆五人の賞金稼ぎ
(1969年製作、工藤栄一監督、脚本:高田宏治、音楽:津島利章、撮影:鈴木重平
若山富三郎、大木実、真山知子、北村栄三、潮健児、徳大寺伸、志賀勝、、伊吹吾郎、天津敏、小池朝雄、中谷一郎、土田早苗、石山律、嵐寛寿郎)

   
若山富三郎のマカロニ・ウェスタン風娯楽時代劇の第2作。
真山知子、潮健児、天津敏は、役柄は違うが第1作目から引き続き出演している。

下野黒羽領榎村の農民たちは、名主榎太左衛門(嵐寛寿郎)の元に集結し、税の軽減を願い出、砦を作って抵抗する。
領主大関佐渡守(小池朝雄)は、家老芝池主水(中谷一郎)等に命じ、砦の壊滅を狙うが、農民たちは賞金稼ぎを雇い抵抗する。

賞金稼ぎ達は、ガトリング銃を武器に、悪代官一味と戦う錣市兵衛(若山富三郎)と望月弥太郎(大木実)、陽炎(真山知子)、鬼塚隼人(北村英三)、青砥九内(潮健児)の5人組の活躍を描く、時代劇アクションである。

ガトリング銃は、1868年の戊辰戦争で使用した記録が残っているというが、この映画の時代背景は良く分らない。
連発銃やライフルなども登場し、さながら時代劇というよりは、西部劇風でもあり、最後は大砲で砦は木端微塵にするド派手な演出となっている。

小池朝雄が、相変わらずの芸達者振りを見せ、伊吹吾郎が市兵衛を襲う忍者集団の頭領役で出演、
土田早苗(出演時20歳)が名主の娘で可憐な姿を見せている。
5人組の仲間では、望月弥太郎に見せ場が用意されているが、他の3人はあまりぱっとせず、真山知子や潮健児は1作目の方が存在感有り。

難しいことを考える映画ではないのだが、若山富三郎は、丸っこい身体でトンボを切り、軽快な動きを見せる、このシリーズの他に「極悪坊主」「極道」「子連れ狼」シリーズなどでスクリーンの人気者だった。
テレビでも活躍し、「唖侍鬼一法眼」「賞金稼ぎ」「事件」シリーズ等主演作も多いが、1970年代半ば以降は、映画・テレビで名脇役振りも見せる演技派でもあった。(勝新太郎は、実の兄)

「衝動殺人!息子よ」「悪魔の手毬歌」「江戸川乱歩の陰獣」「ブラック・レイン」等印象に残る重厚な演技を披露している。テレビでシリーズとなった「事件」は、必見である。

“毎日が映画日和” 65点


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賞金稼ぎ(第1作) [面白時代劇を見逃すな!]

☆賞金稼ぎ
(1969年製作、小沢茂弘監督、脚本:高田宏治、伊上勝、音楽:八木正生、
撮影:山岸長樹
若山富三郎、野川由美子、真山知子、片岡千恵蔵、鶴田浩二、天津敏、睦五郎、潮健児、高橋昌也、藤岡重慶、汐路章、三島雅夫)
   
マカロニ・ウェスタン風の娯楽活劇時代劇。
主演は、俳優の中でも殺陣の上手さではピカ一の若山富三郎で、主人公錣(しころ)市兵衛役を演じ、見た目の体型とは違い、キレのある殺陣と身のこなしで、その実力を如何なく発揮している。ちょっと女好きなキャラクターもお似合いである。

オランダの商船が来航し、幕府に条約の締結を求めるが幕府は拒否、オランダ側は、幕府と反目する薩摩藩へ新式銃(ヘーゲル銃)と引き換えに開港を迫る。
幕府からの隠密に手を焼く二階堂や牧野豊後守は、江戸家老伊集院右京の静止を聞かず、幕府に反旗を翻す。藩主島津公の謀反の決断に、家老伊集院は、薩摩藩百年の計を思い服従を装い、オランダ船を爆破しようとする。

オランダとの交渉へ出向く場面が、最後の決戦の舞台となるが、天津敏演ずる二階堂との、決闘はちょっと物足りなかったが、片岡千恵蔵との決闘は、迫力満点で、最後は、伊集院の代りに、オランダ船を爆破し、薩摩藩と日本を救う。

片岡千恵蔵が、伊集院右京を演じ貫禄の演技で、画面を引き締めれば、鶴田浩二が将軍家重役で顔を見せる。
野川由美子が、幕府の隠密役で美しい姿を見せれば、土地の娘に扮した真山知子が華を添える。(ジェームズ・ボンドに抱かれた悪女の様に味方となる)

汐路章や潮健児、睦五郎や藤岡重慶等の芸達者な脇役達が、凝った演技を見せる。
荒唐無稽なストーリーを小沢茂弘監督が、手際よくさばいて見せる。
007のように秘密兵器がいろいろ登場し、マカロニ・ウェスタンの様に活劇シーンがふんだんに登場する。
最後の爆破シーンは、しょぼい印象だが、まあご愛嬌といったところか。
このシリーズは、3作目まで製作された。
若山富三郎主演で製作された「人形佐七捕り物帖」シリーズ、「極悪坊主」シリーズのDVDの発売も是非御願いしたい。

“毎日が映画日和” 70点


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忍びの者 [面白時代劇を見逃すな!]

☆忍びの者
(1962年製作、山本薩夫監督、脚本:高岩肇、音楽:渡辺宙明、撮影:竹村康和、原作:村山知義
市川雷蔵、伊藤雄之助、藤村志保、城健三郎(若山富三郎)西村晃、岸田今日子、藤原礼子、加藤嘉、丹羽叉三郎、小林勝彦)
   
日本映画傑作時代劇の1本!!
漫画チックではなく、シリアスなタッチのリアリズム溢れる映画とした忍者時代劇の傑作。
久しぶりに鑑賞したが、思っていた以上に楽しかった。
社会派の巨匠山本薩夫監督が、忍術のさまざまな技をリアルに見せてくれた忍者映画の元祖とも言える作品で、当時大ヒットした作品。

百地三太夫、藤林長門守の2役を演じる伊藤雄之助の演技が凄い。
忍者たちの競争心を煽り、信長を暗殺しようと企む、最後は信長に砦を攻められ命を亡くすが、百地三太夫役の演技が特に見物で、凝った役作りで楽しませてくれる。
同じ年、黒沢明の「椿三十郎」でも、飄々としていながら懐の深い城代役を演じていて、芸達者振りを見せている。
多くの巨匠(黒沢明、木下恵介、市川昆、小林正樹、成瀬巳喜男、中村登、川島雄三、増村保造)等の作品に出演、60歳という若さで亡くなった独特の風貌が特徴の俳優だった。

主人公の忍者石川五右衛門を演ずるのは、大映の看板スター市川雷蔵で、権力のため翻弄される若き忍者役、この作品のヒットを受けて、忍びの者シリーズは8作製作され全て主人公を演じている。(主人公の設定は、その都度違う)
クール、ダンディー、ニヒルと、さまざまな形容詞で呼ばれた俳優だが、実生活では、非常にまじめで誠実な人柄だったとのこと、この作品では、そういう一面を見せていて、頭領の妻との不倫に悩み、忍者の宿命に疑問を感じ、新たな生活に踏み出そうとする人間像を演じている。出演時31歳、亡くなる8年前の作品である。

信長の暗殺一歩手前で失敗するのだが、忍者たちのさまざまな武器や術をリアルに映像化している。変身の術、隠れ扉や秘密の逃げ道、まきびしや手裏剣、短剣、すいとんの術、変わり身の術、城郭へ忍び込む際の城壁の登り方、糸を使い毒物を流し込む毒殺方法など、とにかく興味津津である。

岸田今日子が、五右衛門に惚れる頭領の妻役で、演技派女優らしさを見せ、藤村志保が五右衛門の子供を宿す、娼婦上がりだが、初々しい役で出演、西村晃が五右衛門をライバル視する忍者木猿役、五右衛門の見張り役に加藤嘉、織田信長に改名前の若山富三郎(当時は、城健三郎)と錚々たるメンバーをキャスティングし、傑作時代劇となった。それぞれの個性が引き出され、山本薩夫監督も演出冥利に尽きたのではないだろうか。

1940年~70年代まで大映や東映映画の脚本を中心に活躍した脚本家高岩肇の脚本が、抜群に面白い。このような映画は大好きで、シリーズ化された作品も是非観たい。DVDの発売をお願いしたい。
時代劇ファン、必見の映画である!!

”毎日が映画日和“ 85点


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運河良けりゃ(山田洋次監督) [面白時代劇を見逃すな!]

☆運が良けりゃ
(1966年制作、山田洋次監督、脚本:山内久、山田洋次、音楽:山本直純
撮影:高羽哲夫
ハナ肇、倍賞千恵子、花澤徳衛、犬塚弘、桜井センリ、安田伸、砂塚英夫、江幡高志、穂積隆信、田辺靖男、田代謙三、武智豊子、左卜全、藤田まこと、渥美清)


名作日本映画再発見の1本!!
落語「らくだ」「さんま火事」「突き落とし」「黄金餅」という江戸古典落語をベースに、山田洋次と山内久が、江戸時代の人情喜劇とした脚本を映画化した作品で、名作である。
監督山田洋次、主演ハナ肇、倍賞千恵子という組み合わせは、この後「なつかしい風来坊」「喜劇一発勝負」「ハナ肇の一発大冒険」「喜劇一発大必勝」と続くことになる。(1966年~1969年)
長屋に暮らす人々のさまざまなエピソードや、左官職人の熊五郎(ハナ肇)とおせい(倍賞千恵子)の兄弟愛を中心にした人情話で、多少荒っぽいが人の好い熊五郎を中心に物語は進んでいく。
「男はつらいよ」シリーズ前の山田洋次監督作品で、やはり脚本がしっかり書き込まれ、出演俳優達の個性を上手く引出し、抜群の面白さを見せている。

根底には、“やさしさ”が溢れ、山田節が堪能出来る作品。
主演は、63歳という若さで亡くなったコミックバンドの草分けのリーダー、ハナ肇で、ヒロイン役には倍賞千恵子が扮している。
懐かしい顔触れが揃い、大店の放蕩息子役の砂塚英夫の名調子がうれしい。
花澤徳衛が、演技派の実力を発揮し、犬塚弘や桜井センリなどのクレイジーキャッツの仲間も大熱演。武智豊子、江幡高志、穂積隆信等の名脇役達も楽しい演技を見せてくれる。

妹想いの兄貴を演ずるハナ肇のキャラクターが、時代劇の人情話とマッチし、風貌も良く合っている。山田洋次監督作品には、晩年まで出演し、見事な助演を披露した名優でもある。(「遥かなる山の呼び声」は必見!!)

藤田まことや左卜全、渥美清も顔を見せ、映画を盛り上げている。
山田洋次作品の多くで撮影監督を務めた、高羽哲夫や後に「男はつらいよ」を手懸ける山本直純が音楽を担当、山田組が集結している。
死んだばあさんのかっぽれを踊るシーンをクライマックスに、ほのぼのとした人情話が、繰り広げられる名作となった。

“毎日が映画日和” 80点

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御用牙(かみそり半蔵地獄責め) [面白時代劇を見逃すな!]

☆御用牙(かみそり半蔵地獄責め)
(1973年制作、増村保造監督、脚本:増村保造、撮影:宮川一夫、音楽:富田勲、原作:小池一雄
勝新太郎、西村晃、黒沢年男、佐藤慶、小松方正、岸田森、小池朝雄、稲野和子、相川圭子)
   
勝新太郎「御用牙」シリーズ第2作である。

流石は、増村保造監督が、脚本まで手懸けているということで、解りやすく面白い作品となった。
女神主の子供おろしの現場に踏み込み、死体の女性が、海山寺へお稽古ごとに通っていた駿河屋の娘との情報を得た半蔵は、早速寺へ忍び込む。金持ち商人たちが、尼寺で酒池肉林の世界を繰り広げる現場へ踏み込んで壊滅させる前半から、得意の“座禅ころがし”と拷問の苦痛と喜びの2弾攻めで、女性の口を割らせる場面が、刺激的に描かれていく。

後半は、悪党浜島庄兵衛(佐藤慶)を捕えようと金座商人後藤家に泊まり込み、若後家の陸(稲野和子)を籠絡し味方に付け、泊まり込みで、庄兵衛が襲うのを待つ。
金座の後藤家には、勘定奉行大久保山城守(小松方正)が、製造する2万両の小判を4万両に金の量を調節しろと迫る。押し入れでその様子を伺っていた半蔵は、浜島庄兵衛を倒した後、勘定奉行相手に、悪巧みを批判し告発する。大久保の用心棒御子柴十内(黒沢年男)との一騎打ちで、御子柴を倒すシーンも迫力あり、黒沢年男が好演。

時代劇では、良く描かれるアンチ権力の一匹狼で、カミソリ半蔵というよりは、出刃包丁のような半蔵のイメージの勝新太郎が、サービス精神旺盛な映画を製作している。

自宅のふろ場の、隠し扉には武器が収納され、天井や壁には弓や槍などが仕込まれており、前作以上に劇画調タッチに仕上げている。
この時代(1970年代前半)映画の検閲は厳しくなかったのだろうか。
女性の裸体、激しい斬り合い、血しぶきと刺激的な映像が続く。

隆盛を誇った時代劇映画も往年の人気がなく斜陽となっていた時期で、「子連れ狼」「御用牙」「座頭市」シリーズ等の制作に携わり、勝プロダクション社長として、 時代劇の灯を消すなと製作を継続していた。
(この時期、石原裕次郎は「影狩り」、三船敏郎は、テレビドラマ「荒野の素浪人、」「荒野の用心棒」)などを制作)
題材としては、面白い素材だったが、庶民の見方を自認するのであれば、もう少し庶民と触れ合う場面が欲しかった。
また、もう少しユーモアがある役作りの方が、勝新太郎のキャラクターには、合ったのではないだろうか。
黒澤年男が、無気味な用心棒役で凄味があったし、佐藤慶も楽しそうに悪党を演じていたのが印象に残る。

草野大吾、蟹江敬三の2名の子分役は、前作よりも存在感が増し、画面を盛り上げている。色気担当のベテラン女優稲野和子の演技はなかなか楽しめた。巫女役宗田政美、如海尼役相川圭子は、良く知らないが、身体を張った体当たりの演技で楽しませてくれる。増村保造監督の演出は手堅く、そつなくまとめているあたり流石である。

“毎日が映画日和” 70点


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御金蔵破り [面白時代劇を見逃すな!]

☆御金蔵破り
(1964年製作 石井輝男監督、脚本:野上龍雄、石井輝男、撮影:脇武夫
音楽:八木正生、原案:高岩肇
片岡千恵蔵、大川橋蔵、丹波哲郎、杉浦直樹、朝丘雪路、安部徹、青木義朗、今井健二、待田京介、伊沢一郎、潮健児)
     
江戸城の御金蔵から千両箱32箱盗むという原案を、野上龍雄、石井輝男が脚本化した痛快な時代劇。

アイデアが面白く、方法もなるほどと唸らせる。江戸城への潜入は、口説いた中老の長持ちに入り込むというもの。花火の音で搬出口の爆破音を消すというアイデアも面白いし、盗み出した千両箱を汚物処理の運搬船の桶に入れるというのもなるほどと納得するアイデア。
お馴染みの俳優が出演しているせいかも知れないが、惜しむらくはサスペンス力というか、、ピリピリする様な緊張感がもうひとつ不足か。

ラスト船底に穴が開いて沈んでしまうのでは、面白味が半減で(当時は、悪事が成功してはいけないという世相を反映していたのかも知れない)できればハッピー・エンドで終わって欲しかった。朝丘雪路は、ご中老役が似合い、綺麗だし清潔な色気が有り、個性が生かされている。

片岡千恵蔵は、さすがの貫録で映画が引き締まり、大川橋蔵は色男振りを発揮するが、まあ無難な役柄。
どうも1963年公開のフランス映画「地下室のメロディ」を意識したのではないだろうか。大川橋蔵が、アラン・ドロン、千恵蔵が、ジャン・ギャバンと考えればいいのだろう。

丹波哲郎、青木義朗、今井健二、待田京介など、後の東映を背負って立つ若手俳優が活躍している。
船上でのチャンバラ・シーンは、あまり意味が無かったように感じる。もうひとひねりして、せめて千両箱の2箱ぐらいを分け合った方が、面白かったと思うし、観終わったあとの爽快感が違ったと思う。
時代劇ではあるが、日本では、珍しいクライムサスペンスの秀作。

“毎日が映画日和” 80点

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必殺仕掛人-春雪仕掛人- [面白時代劇を見逃すな!]

☆必殺仕掛人――春雪仕掛人――
(1974年制作、貞永方久監督、脚本:安倍徹郎、音楽:鏑木創、撮影:丸山恵司、原作:池波正太郎
緒方拳、林与一、山村聡、岩下志麻、夏八木勲、竜崎勝、地井武男、花澤徳衛、佐々木高丸、村井国男、高橋長英、ひろみどり)
   
必殺仕掛人劇場用映画第3作(劇場用最終作)。
今回仕掛ける相手は、岩下志麻扮する猿塚のお千代、勝四郎(夏八木勲)、定六(地井武男)の3人で、仕事の起こりは、蓑火の喜之助(佐々木高丸)、そして花澤徳衛演ずる瀬音の小兵衛で、猿塚のお千代、蓑火の喜之助は、池波正太郎原作「鬼平犯科帳」の登場人物からの借用で、池波正太郎原作の「藤枝梅安―春雪仕掛人―」とは、内容が大きくことなっている。

3人は、子供から女まで全員皆殺しの凶悪犯で、盗賊の掟に反するとのことで、同じ盗賊から殺しを依頼される羽目となる。仕掛けるのは、藤枝梅安(緒方拳)、小杉十五郎(林与一)で、元締めは音羽屋半右衛門(山村聡)で、残念ながら彦次郎は登場しない。

この作品には、女性の裸や濡れ場が頻繁に登場するが、時代の要請でもあったのだろう、男性を意識した作品作りとなっている。

池波正太郎の小説とは別物と思えば、それはそれで楽しめるが、やはり釈然としない。さまざまな事情があるのだろうが、もう少し原作に近い作品であってほしかった。

地井武男扮する定六は、風呂場で殺され早めに画面から消えてゆく。夏八木勲扮する勝四郎が、お千代の情夫で子分を演じていてなかなか渋いところを見せる。竜崎勝も好演で、小杉十五郎と立ち会う剣客役が似合っている。

今回は、お千代から離れて押し込みに入る勝四郎を迎え撃つ蔵の中で、音羽屋半右衛門が、立ち回りも見せるという作品で、小説ではありえない場面もある。
お千代は、梅安が昔捨てた女という設定で、そのことで梅安が窮地に陥る場面もあるが、必要だったかと言えば、必要なかったように思える。

原作に忠実な、本格的な暗殺者が活躍するシリアスな時代劇として、製作してほしいのだが、どこかに、誰かスポンサーはいませんか?
時代劇は、世界に誇る日本文化の宝庫で、世界のマーケットで売れないはずは無いと思うのだが、、、。

音羽屋半右衛門は真田裕之、藤枝梅安は反町隆史、小杉十五郎を大沢たかお、彦次郎役は
岡田准一、おもんは、壇蜜か吉田洋,井上和香あたりで、どうだろうか。
スぺクタルシーンも準備し、緊迫感の中にもスピード感のあるサスペンス時代劇が、出来ると思うのだが、、。悪役には、ビートたけし、中尾彬、小日向文世は外せないところ、監督は、クインティン・タランティーノか三池崇史あたりが面白いと思うが、、、、。妄想ですが、、、、。


“映画はみんな面白い” 70点


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