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子連れ狼(第6作目)―地獄へ行くぞ!大五郎― [面白時代劇を見逃すな!]

☆子連れ狼―地獄へ行くぞ!大五郎―
(1974年制作、黒田義之監督、脚本:中村努、音楽:村井邦彦、撮影:牧浦地志、
 若山富三郎、大木実、富川昌宏、木村功、瞳順子、睦五郎、小林千枝、草野大悟、石橋蓮司、曽根晴美、西田良、潮健児)
   
シリーズ6作目にして最終作。(主演の若山富三郎は、もっと制作を続ける予定だったために、柳生烈堂との決着はつかないまま、終わってしまった)

蔵王の雪山でロケしたという合戦シーンは、今迄観たこともない画面となっているが、そりやスキーで滑りながらの斬り合いは、大変だったことだろう。
当初監督予定だった、三隅研次は、脚本の段階でこれでは西部劇ではないかと、演出を断っていて、特撮物で知られた黒田義之監督に演出を頼んだという裏話がある。

子連れ狼の乳母車が、そりとなって雪原を駆け巡るのは、荒唐無稽だが、今迄もありえない設定で制作されてきたシリーズということも考えると、これはこれで面白いアイデアだった。

柳生烈堂(大木実)も子供を殺され残るは、娘香織(瞳順子)一人となり、拝一刀へ挑んでゆくが返り討ちに会い正妻の子を全て失った烈堂は、妾腹の子で、土蜘蛛一味を率いる土蜘蛛兵衛(木村功)に最後の望みを託すが、柳生の為ではなく、土蜘蛛一族のために拝一刀を倒すためだと拝一刀へ挑んでいく。
設定が面白いし、土蜘蛛3人衆無我(宮口二郎)無門(石橋蓮司)無堂(草野大悟)が、無気味で凄かったのだが、意外とあっさり一刀の乳母車の薙刀兵器に殺されてしまうのは、ちょっと意表を突かれた感じでもう少し迫力あるシーンが見たかった。

「続・荒野の用心棒:Dijango」で、ジャンゴが棺桶からガトリング銃を出し、ジャクソン一味を撃ち殺すシーンの様な、荒唐無稽な物語を見せてくれるのだが、今回は蔵王の一面の雪の中に裏柳生黒鍬一味が、ズラッと並んでいる様は壮観で、(前作では砂丘での決闘シーンで似た様なシーンがある)スタントの人達も大変だったことだろう。

このシリーズは、アメリカでロジャー・コーマンの会社が配給、第1作と2作を編集し、「Shogun Assassin」として1980年に公開された。
オカルト的人気を誇る作品で、クエンティン・タランティーノ等映画人のファンも多い。アメリカンコミックの大御所、フランク・ミラーが「子連れ狼」を大絶賛したことから、アメリカでの人気も高い作品である。

今となっては、この手の作品は誰も制作しないが、ガキ向けの映画ばかり制作する時間と余裕があったら、大人向けの面白い時代劇を是非制作してほしい。
シリアスな原作本の映画化も悪くないが、コミック本の映画化も、面白いと思うのだが、、、。
子役、富川昌宏君のさまざまな驚きの表情や、可愛い仕草が大好きだった。

“毎日が映画日和” 80点




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子連れ狼(5作目)―冥府魔道― [時代劇終焉時代の傑作]

☆子連れ狼―冥府魔道
(1973年制作、三隅研次監督、脚本:小池一雄、中村努、音楽:桜井英顕
撮影:森田富士郎
若山富三郎、富川昌宏、安田道代、佐藤友美、大滝秀治、須賀不二男、加藤嘉、岡田英次、戸浦六宏、志賀勝、天津敏、山城新吾、石橋蓮司、大木実)
   
シリーズ第5弾。
筑前黒田藩のお家事情を公儀隠密黒鍬衆の総統領で、菩提寺の住職慈恵和上(大滝秀治)に知られた黒田藩は、慈恵和上の暗殺と江戸へ出向く和上が持つ密書の奪還を拝一刀に依頼するのだった。

黒田藩の秘密とは、藩主黒田斉隆(加藤嘉)の妾に産ませた子供が女の子であるのを隠し、世継ぎの男子として育ていたことで、その秘密を知った慈恵和上を殺害しようというものだった。

拝一刀の腕を試す名目で、黒田藩は刺客を次々と繰り出すが、ことごとく一刀の前に敗れていく前半から、若山富三郎の殺陣が満載で、わくわくする。
黒田藩の忍び不知火(安田道代)から、別の刺客の依頼を受けた一刀は、大川の渡し場で、慈恵和上を殺害する。

前半に、一刀と大五郎親子の冥府魔道に生きる絆の固さを示す場面が挿入されている。街の中でスリ(佐藤友美)が追われ、大五郎に財布を預け、“誰にも言わないで、約束だよ”と言ったことから、岡っ引きに捉えらえた大五郎は、叩きの刑にあっても、決してく口を割らず、約束を守るというエピソードがある。
「子連れ狼」シリーズの名場面として語り継がれるだろう出来映えである。
素敵な女っぽい女優佐藤友美が、粋なスリを演じ楽しませてくれる。

そして、不知火からの依頼を果たそうと黒札藩へ乗りこみ、城主共々妾の子を殺害し、正妻の子供松丸君を世継ぎとした不知火は、自ら命を絶つ。というストーリーで、水中での暗殺シーン、砂丘での大立ち廻りや、城内での決戦など、見どころ満載である。

首が飛び、身体が飛ぶいつもの惨殺シーンは、相変わらずで、みはや漫画チックになっている。一刀の乳母車の秘密兵器もパワーアップしており、機関銃どころか、ガトリング銃と化している。

柳生烈堂の企みは、全て失敗しするものの、烈堂(大木実)との決戦はお預けとなる。勝プロダクションの経営もかなり厳しくなり、経緯はわからないが、製作は勝新太郎から、若山富三郎へ変更されている。

“毎日が映画日和” 75点


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子連れ狼(第4作目)―親の心子の心― [時代劇終焉時代の傑作]

☆子連れ狼(4作目)―親の心子の心――
(1972年制作 斎藤武市監督、原作・脚本:小池一雄。小島剛、撮影:宮川一夫、音楽:桜井英顕、
若山富三郎、林与一、山村聡、東三千、遠藤辰雄、小池朝雄、内田朝雄、岸田森、田中浩)
   
「子連れ狼」シリーズ4作目、監督は三隅研次から斎藤武市へ変わっている。
監督が変わると、面白いことに、タッチが変わり、拝一刀が少し優しくなっているような感じがする。

狐塚円記(岸田森)に騙され操を奪われた娘雪は尾張藩を脱藩し、復讐を誓う。
胸に金太郎の刺青、背中に山姥の刺青を施した雪は、尾張藩武士を倒しては、髷を送りつけ、円記との対決にこぎ付ける。
妖術の眼くらましに2度は敗れることなく、見事宿願を果たす。
尾張藩より、雪(東三千)の殺害を請け負っていた一刀は、雪との果たし合いの末、見事な最後を見届け、野火送りとする。

因縁浅からぬ柳生軍兵衛(林与一)は、御前試合での雪辱を果たそうと再び一刀に挑むが、腕を切り落とされ、一度死んだ者の命をとっても意味はないと一刀は、留めを果たさず立ち去ってゆく。

雪の父親乞胸仁太夫(山村聡)を訪ね、雪の遺骨を届け、事の仔細を伝えた一刀親子が立ち去ろうとした際に、柳生烈堂の策略で、尾張藩は一刀を捕縛しようとするが、一刀は尾張藩主徳川義直(小池朝雄)を人質に獲り脱出する。
広大な岩山での裏柳生との壮絶な決戦が始まり、傷つきながらも一刀は、烈堂(遠藤辰雄)の右目に短剣を突き刺し、その場を切り抜ける。

何ともアクション満載の作品となっているが、前3作の様な過激な描写は少し押さえられているように感じる。
アクションのアイデアが満載で、これでもかという工夫と見映えの良さに脱帽のシリーズである。
今作での冒頭シーンは、雪が上半身裸体で、追ってと刀を交えるチャンバラのシーンで、びっくりするが、金太郎の刺青で覆われた上半身は乳房も露わで、女優魂に敬服する。

共演者は大物揃いで、山村聡、林与一、小池朝雄、内田朝雄、遠藤辰雄、岸田森、田中浩等のベテランが、脇を固めている。
大五郎の出番も少し増えているのがうれしかった。

“毎日が映画日和” 70点

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追撃機「The Hunters」 [戦争娯楽活劇]

☆追撃機「The Hunters」
(1958年制作、ディック・パウエル監督、脚本:ウェンデル・メイス、撮影:チャールズ・G・クラーク、音楽:ポール・ソーテル、原作:ジェームズ・ソルター
ロバート・ミッチャム、ロバート・ワグナー、マイ・ブリット、リチャード・イーガン、リー・フィリップス、ジョン・ガブリエル、ステイシー・ハリス)
   
「眼下の敵:The Enemy Below;57」のディック・パウエル監督の作品。
1952年アメリカ空軍F86戦闘機に乗務、北朝鮮軍ミグ戦闘機との戦いに挑む朝鮮戦争でのサビル少佐(ロバート・ミッチャム)の物語。

空中戦が中々の見物で、本物の戦闘機の迫力が伝わってくる。
クール・ビューティー、クリス役のマイ・ブリットとの恋模様も描かれるが、ちょっと中途半端な設定で、ディック・パウエル監督は、あまり恋愛ものは得意じゃないかも。

生意気な戦闘機乗りベル中尉(ロバート・ワグナー)や、クリスの夫で、サビルの飛行隊に所属するアボット中尉(リー・フィリップス)等と北朝鮮軍の撃墜王”ケイシー・ジョーンズ“隊長の飛行隊との戦いなど、面白く描かれているし、墜落したアボットを救出するサビルとベルの逃避行も、ちょっとしたスパイスとなっている。

映画スタート当初は、へんてこ伊丹空港や京都が出てきて、興ざめするが、風景描写は実際にロケを行っているようで、京都や宮島(?)が、出てくるシーンもある。
前作「眼下の敵」が海を舞台にした傑作だったので、今作では空を舞台にということだろうか。アメリカ空軍の全面協力を得ての製作は、迫力ある空中シーンが満載となっている。ディック・パウエル監督は、男の世界を描くのは得意のようである。

反共的ニュアンスも感じられるが(アメリカ軍の協力を得るためということもあるだろう)、それによって、映画のストーリーが可笑しいとか、ということはなく、肩が凝ることも無く、時間つぶしには最適の映画である。
ロバート・ミッチャムの存在感が、良い感じ。

“毎日が映画日和” 70点(中々の美人女優、マイ・ブリットに5点サービス

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ダンス・ウィズ・ウルブス「Dances with Wolves」 [見逃すなこの西部劇!!]

☆ダンス・ウィズ・ウルブス「Dances with Wolves」
(1990年制作、ケヴィン・コスナー監督、脚本:マイケル・ブレイク、音楽:ジョン・バリー、撮影:ディーン・セムラー、原作:マイケル・ブレイク
ケヴィン・コスナー、メアリー・マクドネル、グレアム・グリーン、ロドニー・A・グラント)
    
1860年代、フロンティアという名目で侵入した白人に土地を奪われたインディアン(スー族)との交流を描いたアカデミー賞作品賞・監督賞(7部門受賞)受賞作品。
インディアン側の視点で描いていることと、白人は侵略者とであると明確な意図で貫かれている作品となっている。

バッファローは、インディアンの貴重な食料で部族が食べれる分だけで、満足なのだが、白人の商人たちが毛皮欲しさに無為な乱獲をしたことを批判的に描き、騎兵隊の隊員が奪われた土地を奪い返すというセリフがあるが、奪ったのは白人なのだということを意図する演出となっている。

1990年当時、アメリカ製西部劇は衰退していて、インディアンは白人に危害を加える悪人で、白人は善人という在り来たりの描き方では、観客にそっぽを向かれていたのだが(視点を変えた作品もあった)、3時間を超える長尺にも拘らず、従来と異なる視点から描いたこの作品は、全世界で4億ドルを超える大ヒットとなった。

ケビン・コスナーは、監督・主演を努め、監督賞も受賞していて初監督にして監督賞受賞という、偉業を達成している。当時トップスターとして君臨していて、リスクが高かったと思うが大成功を納めた。
しかし、その後製作者として関わった「ワイアット・アープ:Wyatt Earp;94」
「ウォーター・ワールド:Waterworld;95」は、巨額な制作費を投入したにも関わらず、上手くいかなかったことも有り、2000年以降は、助演等に徹し低迷するもの、ここ数年は、テレビ・映画共、佳作に主演し復活を予感させている。

撮影画面が綺麗、荒野のさまざまな景観、大自然の美しさを堪能させてくれる。アカデミー賞撮影賞を受賞したのも、うなずける美しさである。

家族を大切にし、仲間を大切にする先住民の生活、人との関わり合いを大切にするという生き方に共感する場面が沢山描かれている。
主題の斬新さと語り口の上手さは、初監督作品とは思えない演出振りで、ケヴィン・コスナーの豊かな才能を感じさせる。

まだ、60歳と若く、7年後再び監督した「ポストマン:The Postman;97」は、製作費の回収も出来ないような散々な結果となり、第18回ゴールデンラズベリー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、最低オリジナル歌曲賞を受賞する。
2003年、再び西部劇に挑んだ「ワイルド・レンジ:Open Range;03」は、本格的な西部劇で、凄まじい銃撃戦とロヴァート・デュバルの演技が印象に残る傑作で、アメリカでもヒットし、ケヴィン・コスナーの監督としての才能を再び世に知らしめた。その後、監督作品はなく、そろそろ新作を期待したところ。

先住民の会話が、彼らの言語で語られる(それもほとんど全編)という作品は珍しく、メイク技術が発達した所為か、白人俳優が先住民を演じても、違和感なく、先住民らしく描かれていて、見応え十分の作品だった、181分という長さが、あまり気にならなかったのは、作品の力かも知れない。

“毎日が映画日和” 80点


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駅馬車(ジョン・フォード監督)「Stagecoach」 [ジョン・フォード監督の名作]

☆駅馬車(ジョン・フォード監督)「Stagecoach」
(1939年制作、ジョン・フォード監督、脚本:ダドリー・ニコルズ、音楽:ボリス・モロース、撮影:バート・グレノン、レイ・ビンガー
ジョン・ウェイン、クレア・トレヴァー、トーマス・ミッチェル、ジョージ・バンクロフト、ジョン・キャラダイン、ルイース・ブラット、アンディ・ディバイン、ドナルド・ミーク)
   
西部劇のエッセンスを全て詰め込んだ傑作中の傑作。
職業差別、人種差別等の要素も取り入れたヒューマンなストーリーは、その後の西部劇に多大なる影響を与え、ジョン・フォード監督の代表作であり、ジョン・ウェインが大スターとなるきっかけとなった作品である。

タイトルロールから、騎兵隊、インディアンが登場、画面の音楽がそれぞれの曲調に変わる見事なスタートからして、これからの展開に期待を抱かせる。
駅馬車が到着する西部の町のセットもスケールが大きく、スタッフがしっかりと仕事をしていることが、良くわかる。

飲んべいのドク(トーマス・ミッチェル)ブーンやダンディーなギャンブラー、ハット・フィールド(ジョン・キャラダイン)、娼婦のダラス(クレア・トレヴァー)、人のよさそうな酒のセールスマンピーコック(ドナルド・ミーク)、騎兵隊の夫に会いに来た妊娠中のルーシー(ルイーズ・フラット)、5万ドルを横領した銀行家ゲートウッド(バートン・チャーチル)達が、トントという町から駅馬車でローズバーグへ向かう。

御者は、バック(アンディ・ディバイン)、同行する保安官は、ウィルコック(ジョージ・バンクロフト)、そして途中から駅馬車に乗りこむリンゴ・キッド(ジョン・ウェイン)等個性豊かな俳優陣が、表情も豊かに名演技をみせ、ジェロニモ率いるアパッチとの戦い、リンゴの父と弟の仇プラマー兄弟とリンゴの決闘とクライマックスへ進んでいく。

インディアンとの戦いは、迫力満点で、どのように撮影したのかというぐらい凄い撮影で、ダイナミックでスピーディーな激しいアクションシーンは、今もって、この作品を超える映画は出てこないと言っても過言ではない。
本物の迫力は、76年経た今見ても素晴らしいの一言に尽きる。

トントの街から追い出される飲んだくれのドク、娼婦ダラスへの偏見は、今でもあることで、そんな2人に優しく声を掛けるのは、お訪ね物のリンゴ・キッドだった。ダラスへの思いを告白、ダラスは戸惑いながらもその愛を受け入れたいのだが、迷いも有り踏ん切りがつかないという葛藤や、99分という上映時間の中に、賭博師ハットフィールドの大尉夫人ルーシーへのダンディズム(無償の奉仕)、ルーシーへのダラスの女としての優しい思いやり、保安官とドクのリンゴへの優しさ等さまざまなエピソードを手際よく織り込み、見応え十分である。

モニュメント・バレーの景観の中で展開されるアパッチとの戦いは、究極の撮影場面で、馬車の先頭に乗り移るシーン、乗り移ったインディアンが、リンゴに撃たれ地面に落ち、馬車の下になる場面など、よく怪我をしなかったと感心するばかり。
見ていて楽しい作品の枠を超え、古典的名作というよりは、映画史の中で燦然と輝く傑作である。
アカデミー賞では、「風と共に去りぬ;Gone With the Wind;39」に阻まれ、作品賞、監督賞などは受賞とならなかったが、助演男優賞(トーマス・ミッチェル)作曲賞・編曲賞(リチャード・ヘイグマン、フランク・ハーリング、ジョン・レイボルド、レオ・シューケン)の2部門を受賞している。

”毎日が映画日和“ 100点(文句ない傑作で満点!)

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秋刀魚の味(小津安二郎監督) [小津の名作]

☆秋刀魚の味
(1962年制作、小津安二郎監督、脚本:小津安二郎、野田高悟、音楽:斎藤高順、撮影:厚田雄春
笠智衆、岩下志麻、佐田啓二、岡田茉莉子、中村伸郎、北竜二、杉村春子、東野英治郎、加東大介、吉田輝雄、三上真一郎、三宅邦子、岸田今日子、牧紀子)
   
小津安二郎監督の遺作である。
多くの作品でテーマとしてきた、娘の結婚をほのぼのとしたユーモアを交えて描いた好編である。
娘を持つ父親としては、涙失くしては見られないシーンもあり、ラストの笠智衆の孤独な寂しい姿は、痛烈に脳裏に焼き付く。

恩師や同級生との交流を通じて、人生の悲哀や運命をサラッと描いて、決して深刻にはならない小津タッチが、淡々と描かれていく。
どこかで見た様なシーン、同じような役柄を同じ俳優が演じていて、さまざまな映画が交錯するような感じもするが、これが小津流なのだろう。

妻を亡くし、娘と息子と3人で暮らすサラリーマン平山周吉(笠智衆)が主人公で、旧友の河合(中村伸郎)、堀江(北竜二)の3人が、物語の進行役を務めている。気の置けない3人の会話が楽しいし、河合、堀江という苗字は「彼岸花」でも同じ苗字の役を同じ俳優が演じている。
(「秋日和」でも、苗字こそ違うが似た様人間関係が描かれているし、3人が集まる料亭「若松」の女将役は3作とも高橋とよが演じ、3人組の冷やかしに会う役を演じている。)

セリフは、何度か繰り返される独特のセリフ回しが印象に残るのも小津流、決まったカメラアングルでの構図や似た様なセット作りと出演俳優の多くは常連が努めるというスタイルは、「豆腐屋」には「豆腐」しか作れないという小津監督の信念に基づく手法で制作されており、作品は世界的にも評価が高い(特にヨーロッパ)。

主人公平山役の笠智衆は戦前から小津作品に出演、戦後はほとんどの作品に出演した。同じ役名での出演も多く、笠智衆に限らず他の俳優達も同様のキャスティングをされたケースが多かった。
娘の結婚、家族の絆をテーマとした作品が多く、哀しくも有り、楽しくも有り、いつか出会うであろうシチュエーションを、疑似体験させてくれる作品となっている。

いつもながらその独特の間合い、熊本鉛の抜けないセリフ回しが安心感を与える笠智衆の名演技が、心を揺さぶるし、この作品では東野英治郎のひょうたん先生が出色の出来。

岩下志麻、岡田茉莉子が綺麗で、三宅邦子、岸田今日子の垢抜けした品の良さが目立ち、周平の会社のOL田口役の牧紀子も品の良い美人女優で、小津監督のセンスの良さが忍ばれる。杉村春子や高橋とよなど、常連の俳優達も名演技を見せている。

脚本作りの段階で、各場面の演出プランが出来上がっているのだろうし、余分な演技を排除させ、納得するまでテイクを重ねたという完全主義者小津安二郎監督の最後の作品と思うと、灌漑深いものがある。

“毎日が映画日和” 85点


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刑事ジョン・ブック目撃者「Witness」 [キレのあるサスペンス作品!]

☆刑事ジョン・ブック目撃者「Witness」
(1985年制作、ピーター・ウィアー監督、脚本:ウィリアム・ケリー、アール・W・ウォレス、音楽:モーリス・ジャール、撮影:ジョン・シール
ハリソン・フォード、ケリー・マクギリス、ルーカス・ハース、ジョセフ・ソマー、ダニー・グローヴァー、ヴィゴ・モーテンセン)

   
第58回アカデミー賞8部門ノミネート(作品賞、監督賞、主演男優賞他)脚本賞、編集賞を受賞したサスペンス作品である。
アーミッシュの子供が、殺人の目撃者となったことから、その母親と子供を守ろうとする刑事ジョン・ブックの物語である。

犯人は、麻薬課の警部補マクフィー(ダニー・グローヴァー)とファギーで、黒幕はジョン・ブックの上司シェイファー本部長(ジョセフ・ソマー)、ブックは銃撃戦で傷つき、アーミッシュの村で、レイチェルの義父の家で匿われるが、相棒も暗殺され窮地に追い込まれる。

非暴力に訴え、前近代的な生活を営むアーミッシュとの交流やレイチェル(ケリー・マクギリス)との恋愛の行方なども織り交ぜながら、シンプルでわかり易い脚本、過激な描写を避けた手堅い演出など、単なるサスペンスにとどまらず人間の尊厳を問う主題も描かれた秀作である。

暗殺犯2名の刑事の襲撃を撃退、レイチェルを人質にしたシェイファー本部長と対峙するが、アーミッシュの村人が駆けつけたため、覚悟を決め、ブックの殺害未遂を諦め、銃を降ろすことになる。

アーミッシュの生活が興味深く、これほど本格的に描いた作品も珍しいのではないか、“イギリス人には気を付けろ!”という警告は、非アーミッシュのアメリカ人を指す言葉なのだが、事件を解決し、ブックが村を出る時に義父から言葉を掛けられる場面は、アーミッシュとして認められたことを表しているのだろうか。

ハリソン・フォード43歳、ケリー・マクギリス28歳での共演で、役柄からいってもキャスティングがぴったりで、この作品後のケリー・マクギリスは主演作品が相次いだ。
ハリソン・フォードは、「スター・ウォーズ;Star Wars」「インディー・ジョーンズ;Indiana Jones」シリーズのヒットで大スターの仲間入りの頃で、俳優としての絶頂期を迎えていた頃。

オーストラリア、シドニー出身の監督、ピーター・ウィアーは、この作品も含めアカデミー賞監督賞に4度ノミネートされており、「今を生きる;Dead Poets Society;89」「マスター・&コマンダー;Master and Commander:03」などのヒット作品も演出している。残念ながらここ数年はヒット作に恵まれず、2010年の力作「ウェイバック:The Way Back」以後の新作は発表されていない。

無駄な描写のない、清潔感あふれる好みの作品。
ハリソン・フォードの刑事役も中々いい。

”毎日が映画日和” 80点


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ランボー2「Rambor:First Blood Part Ⅱ」 [アクション爆裂!!]

☆ランボー2「Rambor :First Blood PartⅡ」
(1985年制作、ジョージP・コスマトス監督、脚本:シルヴェスター・スタローン、ジェームズ・キャメロン、音楽:ジェリー・ゴールドスミス、撮影:ジャック・カーディフ
シルヴェスター・スタローン、リチャード・クレンナ、チャールズ・ネイビア、スティーブン・バーコフ、ジュリア・ニクソン、マーティン・コーブ)
   
ベトナム戦争帰還兵ランボー(シルヴェスター・スタローン)が、活躍する第2弾で、世界中でヒットした作品である。(3億ドルを超えるヒット)
脚本には、若かりし頃のジェームズ・キャメロン(「タイタニック:Titanic:97」「アバター:Avatar:09」の監督)が、第2稿まで参加している。

ベトナム戦争から戻っても働く場所も無く、子供を殺した犯罪人として迫害を受ける帰還兵の怒りを描いた第1作のヒットで、第2作目を製作することとなったスタローンは、この作品が「ロッキー」に続くドル箱シリーズとなったことで、一挙にスーパー・スターへと駆け上がっていく。

服役中のランボーをトラウトマン大佐(リチャード・クレンナ)が迎えに行き、新たな任務を告げる。ベトナム戦争で捕虜となった米軍兵が、まだ存在しているかどうか証拠写真を撮る事だった。
ベトナムの捕虜収容所に潜入し、捕虜の実態を観たランボーは、一人の捕虜を救出、味方の到着を待ったが、米軍のヘリコプターは救出目前で作戦を中止し、ランボーはベトナム軍に捕まってしまう。

実は、捕虜がいる事実が明るみに出ると、アメリカは45億ドル相当を身代金として支払うこととなり、敵へ資金を供給することになる事、捕虜の姿を見るとアメリカ国内で復讐の声が高まり、再び戦争となることを恐れたアメリカ政府高官が救出をしない決定をする。
タイ駐在の高官役マードック司令官(チャールズ・メイビア)が、第1作で、ランボーを迫害する保安官(ブライアン・デネヒー)に風貌が似ていて憎まれ役にはぴったり、キャスティングの妙とはこういうことを言うのだろう。

ロシアの軍人ポドフスキー中佐を演ずる(スティーブン・バーコフ)は、悪役がぴったりの俳優で、「007オクトパシー:Octopussy:83」「ビバリー・ヒルズ・コップ;Bevarly Hills Cop:84」等ヒット作への出演も多く、強烈なキャラクターはこの映画でも健在。

救出の際の爆撃シーンや銃撃シーンが凄まじく迫力満点で、さまざまな兵器が出てくるのも、兵器ファンには堪らないだろう。
国のため命を懸けて戦った兵士を、リスペクトするどころか、邪魔者扱いする設定が判官贔屓の観客の共感を呼んだのがヒットの要因だろう。MIA(Missing in Action:戦闘中行方不明)の兵士たちを救出するという作品が、80年代に競って製作されているのは、ベトナム戦争に対する国民感情とも無関係ではなかったことだろう。(「地獄の七人:Uncommon Valor:83」「地獄のヒーロー:Missing in Action:84」等)

この作品は、ゴールデンラズベリー賞4部門を受賞(最低作品賞、最低主演男優賞、最低脚本賞、最低主題歌賞)を受賞した。全世界で3億ドル以上の興行成績を納めた作品を支持した観客と「ゴールデンラズベリー賞財団」会員との評価の違いが面白い。
ランボーシリーズは、4作まで製作され5作目の製作が今年発表された。
来年あたりにも、ランボーの新作が公開されることだろうか。
(2017年3月現在公開はされていない)

“毎日が映画日和” 70点



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ナバロンの嵐「Force 10 from Navarone」 [通好みの渋い戦争映画]

☆ナバロンの嵐「Force 10 from Navarone」
(1978年制作 ガイ・ハミルトン監督、脚本:カール・フォマン、ロビン・チャップマン、撮影:クリストファー・チャリス、音楽:ロン・グッドウィン
原作:アリステア・マクリーン
ロバート・ショウ、ハリソン・フォード、エドワード・フォックス、フランコ・ネロ、バーバラ・バック、カール・ウェザース、リチャード・キール、マイケル・バーン)
     
「ナバロンの要塞:The Guns of Navarone:61」の続編にあたる作品で、原作は1968年に発表された。

ナバロンの要塞を破壊したばかりのマロリー(ロバート・ショウ)とミラー(エドワード・フォックス)に、ユーゴスラアビアへ出向き、ドイツのスパイニコライ(フランコ・ネロ)が、パルチザンに紛れ込んでいるので始末しろという指令が下される。

同行するのは、ネレトヴァ川にかかる橋の破壊を任務とする、バーンズビー中佐(ハリソン・フォード)をリーダーとするアメリカ軍の特殊部隊フォース10のメンバー達と、爆撃機を奪い、合流した脱走兵のウィーバー(カール・ウィザース)等とユーゴスラビアへ飛び立つが、途中ドイツ軍の戦闘機に攻撃され生き残ったのは5人となる。
ドイツ軍に協力する地下組織に捕まった一行は、潜入し情報を流していたパルチザンのリーダーの娘マリツァ(バーバラ・バック)に助けられ、パルチザンとようやく合流できる。

物語りは、2転3転するが、ニコライがスパイである証拠を掴み殺害、橋の爆破も上流のダムを爆破し、激流で橋を破壊するというアイデアで目的を達成するというストーリー。
緊迫感が不足していて、無駄な描写が多くいたずらに長くなった作品。
音楽や効果音の使い方が下手で、戦争冒険映画らしい高揚感の増すような音楽をもっともっと
挿入して欲しかった。

118分の上映時間だが、15分短縮したらもっと面白い作品となったと思われる。
前作のダイナミックで緊迫感や迫力は影を潜め、時にはユーモアを讃えたタッチは、逆に007シリーズで知られる、ガイ・ハミルトン監督の特色かも知れない。(007シリーズを4作品監督)
ロバート・ショウ、ハリソン・フォード、エドワード・フォックス、バーバラ・バック、リチャード・キール、フランコ・ネロ、カール・ウィザース等のスターを配した作品で、冒険小説の大家アリステア・マクリーン原作の映画化としては、まあまあの合格点というところか。

“毎日が映画日和” 65点


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